一田憲子さん『キッチンで読むビジネスのはなし』

Book

本屋さんでもブックオフでも、必ず眺めてしまう、生活・暮らしの本。
昔は片付け本をよく手に取っていた。
片付けが大の苦手な私だが、片付けの本を読むと、その時ばかりはスイッチが入る。
またリバウンドすることもしょっちゅうですが。

そんな中で見つけた、『キッチンで読むビジネスのはなし 11人の社長に聞いた仕事とお金のこと』という一田憲子さんの本。
これまでも、一田さんの本は読んだことがあったけれど、こちらは取材・インタビューがメイン。

世の中に起業したり、お店を始めたり、ご自身で仕事を作り出されている方は沢山いらっしゃるけれど、
「その仕事、どうしてやろうと思ったの?」
「というか、どうやって始めたの?」
「軌道にのるまでは、お金を、生活をどうするの?」
という私の頭に浮かぶ数々の疑問。

この「」へのお返事が見つかるかも?と思い、パラパラめくり出したら、止まらなかった本です。

まず、この本の『はじめに』の言葉。

好きなことをして生きていくには「お金」が必要です。ビジネスは、そんな「お金」を生み出す仕組みです。「夢」や「好きなこと」は、暮らしの中から生まれるのに、その先の「お金のはなし」がなかなか見えてこない……。きっと私はその接点を見つけたかったのだと思います。ビジネスを、「今、手の中にあること」を現実化させる力として、普段の生活に落とし込んでみたかった。

一田憲子『キッチンで読むビジネスのはなし』〜はじめに

そう!そうなんです!
やりたいこと、好きなことはあるけれど、その先の「お金」と、私の中では繋がらない。
それぞれ独立したものとして、頭の中に、心の中に存在している。
「好きなことを一生懸命していれば、いつかお金はついてくるよ」ってよく言われるけれど、正直なところ、
  「いつかは、ちゃんと来るの?」
  「その『いつか』までの間、お金と生活はどうするの?」
  「『いつか』が来た時、それは生活ができる程度になるの?」
などが頭の中で、常に警告として発されている。
やりたいことをやろう、なんて、甘いこと言ってんじゃないよ、と。

だからこそ、どんな風にその仕事に行き着き、生活やお金はどうなっていて、これからどうしていくのか、を聞いてみたかった。
そんな私にとって、非常に面白かった一冊です。

11人の方のお話の内容が面白いのはもちろんのこと、途中途中に入る、その時の一田さんの思いや内心の呟きが、はるか高みの方の成功譚から、私の日常にぐっと引き寄せられる。
こうして本を出している人でさえ、迷ったり失敗したり、愕然とすることがあったりして、そこから何度でも変わっていけるんだなぁ、と勝手に自分を重ねて、勝手に励みにしてしまう。

この本の中で、私が最も衝撃を受けたのが、愛媛で『Sa-Rah』というオリジナルのお洋服を作っていらっしゃる、帽子千秋さん。
愛媛の実店舗と、オンラインでも、天然素材の洋服を販売されている。

帽子さんは、冒頭からして私をびっくりさせた。

「あのね、私がビジネスをする上で、大切にしていることは『お金を見ない』ということなんです」と帽子千秋さんはのっけからそう語りました。え〜!

一田憲子『キッチンで読むビジネスのはなし』

一田さんも驚いている。

ここで働けば毎日川を眺めながらコーヒーを飲めるなあ、という思いで、お店の場所を選び、自分自身が居心地がいい場所に身を置いたら、きっとうまくいくはず、と話す帽子さん。
原価率も家賃もスタッフの給与も、数字を見ないで生きていけるか実験中だという。
そんなこと、できるのだろうか?
うちの夫だったら、猛反対しそうだ。

帽子さんのお店は、見るのも、働くのも楽しそうだ。
お店で洋服を縫う時には、スタッフみんなに、お喋りしながら楽しい気持ちで縫って、と声をかけ。
仕事はやり直しができるけれど、子育てはやり直せないから、子供を優先して、と声をかけ。

でも、もし失敗したら?お店がうまくいかなくなったら?

そんな時は、お店が終わってからコンビニでアルバイトすれば、借金は返せるはず、と帽子さんは話されていた。
これがダメならこれがある、と逃げ道を残しておくこと。
そうして、自分がワクワクしたことを、やってみる、広げてみる。

「気持ちがいい場所にいればいいんだよ」

その帽子さんの言葉は、これからの生き方を模索中の私に、しっかりと根付いた。

きっと、私は帽子さんのように、お金のことは見ずにチャレンジすることは、できない。
それでも、ワクワクする方を選びたいし、自分の気持ちがいいところにいたら、きっといいものが生まれる、その感覚はよくわかる。
逆に、気持ちが塞いだり、曇る場所にいたら、きっとうまくいかないし、喜べない。

自分が気持ちよく働ける。
そして、まわりのみんなも大事にできる。
そんな場を作ってみたい。

私にとってのワクワクは、いつかは、本屋を開くこと、かな。

夢や好きなことと、ビジネスと、自分の普段の生活は、ちゃんと繋がっている。
私の疑問への、全ての答えが見つかったわけではないけれど、仕事について、また違う見方ができるようになった気がします。
夢を日常に落とし込むということについて。
様々な仕事観、仕事のはじまりに触れてみたい方におすすめします。


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